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Beauty Source キレイの魔法

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恋愛セミナー57【総角】

第四十七帖  <総角-2 あげまき> あらすじ

八の宮の一周忌が済み、宇治の姫達が喪服を着替える頃になりました。
大姫からは、後朝の文(きぬぎぬのふみ 一夜を過ごしたあと交わす文)の返事さえもらえない薫ですが、
結婚をさけねばならないといわれる九月になる前に出かけてゆきます。
大姫は薫が女房達に言い含めて、また迫ってくるのではないかと思い、中の姫に薫と結婚するよう話しました。
「お父様がここを出ないようにとおっしゃったのは、お姉様だけのことではないはず。」
中の姫は結婚話など受け入れることはできない様子です。

女房たちは薫の訪れを歓迎し、大姫にも美しい衣に替えるようにうながします。
薫は誰にもわからないうちに大姫を妻に迎えたいと思っていたのですが、大張り切りでことを進めようとする
弁の君を始めとした女房達。
「仏道修行を熱心にされていたお父様に育てられた私は、お気持ちに応えることはできない。
代わりに若い中の姫を大切にしてもらいたいと薫の君にお伝えして。」と弁の君に伝える大姫。
「私もそうお伝えしましたが、心を変えることはできないと。匂宮さまの思惑もございます。
これからの生活のことを考えましてもお二人にはふさわしい縁組。出家されたとしても
お世話をしてくださる方は必要でございます。」と弁の君。
これを聞いて、気分が悪くなって伏せってしまう大姫のかたわらに、中の姫も寄り添います。
大姫の言葉を弁の君から聞いた薫は、自分と似た考えの大姫を嫌うことはできず
「今夜は話すこともできないだろうから、直接寝室に案内を。」と頼むのでした。

寝室には姫達が並んで眠っていますが、一度会っているなら取り違えることはないだろうと、弁の君は薫を呼びいれます。
女房達を警戒していた大姫は、人の来る気配を察し、壁際の屏風の後ろに隠れてしまいました。
薫は姫が一人しかいないのを、大姫が待っていてくれたものと考えて嬉しくなりましたが、
だんだんと別人であることがわかってがっかりします。
大姫より可愛らしさの勝る中の姫が、驚きわなないているのを気の毒に思い、近くにいるに違いない大姫の冷たさを嘆く薫。
中の姫の美しさを惜しみつつ、簡単に気持ちを移すところを見せまいと、その夜を何ごともなく過ごします。

中の姫は気が動転し、大姫が言っていたのはこういうことだったのかと情けなく思います。
朝になって寝室が明るくなると、大姫はキリギリスのように屏風の後ろから出てきましたが、お互い何も言えません。
薫は弁の君に昨夜のことを伝えて帰ってしまい、話を聞いた女房達もあきれてしまいました。
女房達の的外れな取り持ちを不愉快に思いつつ、さすがの大姫も薫の思惑が気になります。

そこへ片枝だけが紅葉している楓の枝と共に歌が届けられたのを、心ならずも嬉しく思う大姫。
「同じ枝を分けて染めた山の姫神にどちらが深い色か問いかけたい。」と何もなかったことにしようとする詠みぶりの薫。
「山の姫神が何故このように染めたのかはわかりませんが、紅葉した方に深い思いがあるとされたのでしょう。」
大姫の歌も文字も見事で、薫は心変わりすることはできません。

京に帰った薫が匂宮を訪ねると相変わらず中の姫に執心の様子です。
昨夜実際に会った会った中の姫の美しさもたしなみも匂宮にふさわしいと感じている薫。
中の姫を代わりにと考えている大姫を気の毒に思いながらも、薫は匂宮を宇治へ案内する決心をするのでした。

恋愛セミナー57

1 薫と大姫    身代わりを差し出す
2 薫と中の姫   心変わりはできず

女性が二人で眠っていたところへ、男性がやってくる場面。
源氏が寝室に入ってきたとき、空蝉が軒端の荻を衣と共に残して去ったことがありましたね。
大姫の場合はさしずめ、女房達に何度も脱ぐように言われていた喪服が「空蝉の衣」にあたるでしょうか。

恋の手達を気どっていた若き源氏は、目当ての人の気配を感じながら、そのまま軒端の荻と関係してしまいましたが、
真面目な薫にはそんなことはできない相談です。

キリギリスのようにという表現、面白いとおもいませんか。
原文は「壁の中のきりぎりす、這い出で給へる。」
なんの説明もなく、大姫をきりぎりすと表現しています。
虫のように狭い空間に身をひそめ、薫と中の姫の様子をうかがっていた大姫。

薫はきっと、そばに大姫がいることに気づいていたことでしょう。
中の姫へ語る言葉は、そのまま大姫に伝えたい思い。
いつも御簾越しに話しているよりも、ずっと素直な表現だったに違いありません。

女房達のおせっかいに腹をたてながら、薫の文がきたことにほっとする大姫。
自分が薫と一夜を共にした時の文には返事をしないのに、今回は文を出す。
自ら仕向けたこととは言え、文に中の姫への愛が語られていたら、薫の心変わりを嘆く気持ちが生まれるはず。

さりげない歌で表現した紅葉した深い思いの楓とは、大姫自身のことだったのではないでしょうか。
大姫も薫と同じように素直な気持ちを表現することができない。
薫が見抜いた通り、似たもの同士の二人なのです。

さらに強行手段に出る薫。
恋はどこへ流れてゆくでしょうか。


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